小雨とはいえ、明和では2日間続けて雨が降りました。梨の実が肥大するこの時期の雨は、とてもありがたいもの。果実もぐんぐん大きくなっています。今年は自分の直売所も設置するし、本当に収穫が楽しみです。
去年の今時期は、収穫に期待していませんでした。それまでの病気を引きずり、実をとることを諦めてその病気を撲滅することを優先していたからです。3年前、自分が明和に来て借りた梨園とは、そんな状態の園でした。
明和が内外から梨の生産者を募集し始めたのが2007年。自分が明和に来たのが2011年ですが、それまで、2人の新規就農者が県外からやってきました。つまり、自分は3人目なんですね。
以前にもこのブログで書きましたが、新規就農者の条件として
①縁もゆかりもない地域で、
②非農家出身の人間で、
③3年以上、無収入でも生活していける&農業経費を出せるお金がない
・・・に当てはまることとしました。上記の3人はまさに新規就農者でした。
当初、自分の面倒をみてくれたのが、一人目の方です。公私にわたりお世話になりましたが、残念ながら農業を断念されました。それだけ、これらの条件をクリアするのは困難です。
二人目の方は、面識がありません。自分が明和に来る数カ月前に、明和からとんずらしたからです。まあ、そのおかげで梨園が空いて、自分が就農することができたんですけどね。ただ、彼が置いていった忘れ物があまりにも迷惑でした。
彼が明和で挑戦したのが梨の無農薬栽培です。果樹の無農薬と聞いて、今、上映されている「奇跡のリンゴ」をイメージされる方もいるかもしれませんが、「覚悟」のレベルが違い過ぎます。奇跡のリンゴの主人公でもある木村さんは、8年間かけて無農薬栽培を確立させたそうですね。・・・8年間です。それまでリンゴの収入もなく、極貧暮らしで家族にも負担をかけ、周辺の人たちからも叩かれても、それでも諦めなかった木村さんの「覚悟」とそのご家族には、心の底から敬服します。
一方で、二人目の彼はわずか半年で諦めたそう。おそらく周りからも散々叩かれて、陰口を言われたことでしょう。彼をフォローするつもりはまったくありませんが、それでも新規就農者が半年間、耐え忍んだのは褒めるべきかもしれません。ただ、木村さんは新規就農ではありませんが、8年間耐えてさらに無農薬を成功に導きました。その覚悟は比べるのもおこがましいでしょう。
さて、二人目がとんずらした後の梨園は、無農薬だったのでもちろん病害虫だらけ。さあ、この梨園をどうするのか、復活させるのに最低でも3年はかかるような園を地元の人たちは誰も管理したくない、ならいっそのこと樹を切ってしまうか・・・。そんな時に、明和を訪ねてきたのが自分だった訳です。
それから1年、2年と病害虫と闘い、今年になってようやくまともな収量が期待できそうな園になってくれました。それだけ手に塩かけてきた梨たちも、そろそろ収穫が近くなってきました。楽しみに方が圧倒的に大きいのですが、寂しさもあるのが不思議。我が子を社会に送り出す気持ちに近いんでしょうかね?